5年ぶりのカムイ伝

明けましておめでとうございます。
この正月は、5年ぶりに「カムイ伝2部」12巻に耽りました。
白戸三平さんには大学時代の「忍者武芸帳」から始まって、「カムイ伝」「カムイ伝2部」とずいぶんお世話になりました。(カムイ外伝は読まず)
どれも、ただの忍者活劇ではないのです。
忍者武芸帳は60年安保の階級闘争のバイブルと言われたものだそうだけれど、その後の作品のカムイ伝ではエコロジカルな視線や農業、農村の成り立ちなど、要素が膨らんでいきます。農家にはたまらないストーリーがたっぷり。寒村にワタを導入するくだりや千歯こきが「後家殺し」とされるくだりなども「そうだよなあ」とリアルに思い入れしてしまうものがあって、もちろん農家でなくとも、読む人の立場で色々な読み方ができる。
それが「カムイ伝2部」ではさらに枝葉が繁るのです。
利根川水系の広々とした森や海の戯れる原野の干拓・治水。皮革でわらじを作って新しい仕事をつくるくだりなどは、全く今にもつながるし、我が身と重なるドラマです。カムイそのものは狂言回しのような立場になっているから、これはもう終わりのない全体小説。