冬の作業の大事な柱は落葉かきです。落ち葉は炭素の供給源でもあり、そして野菜が育つのに欠かせないミネラルの塊でもあります。ミネラルとは、鉄やカルシウム、マグネシウムなど、生育に欠かせない金属イオンの総称です。人間にとっても各種のミネラルは生きていくうえでとても大事ですね。こうしたミネラルはいわゆる化成肥料(化学肥料)にはほとんど含まれていません。戦後まもなくの50年代の栄養成分表と今の栄養成分表とでは、同じ野菜の同じ重量当たりのミネラル(鉄やカルシウム)の含有量が相当に減っているようです。かつては落葉や川岸の青草を刈り取って、それを畑に還していた農法が普通でしたが、今はそれをしなくなった。チッソ・リン酸・カリという3大要素にほぼ頼りっきりの慣行農法が土をやせさせています。一見大きく育っている野菜ですが、その中身が栄養のないことが数字で表されています。単に新鮮ならよいか、国産なら良いのかというと、そういうことではない。こうした栄養のない野菜を食べて育って、それが今の様々な、漠然とした慢性病や無気力の蔓延にもつながっているのではないでしょうか。
写真にある道路は、農園のハーブ園やハウスにつながる道です。真上の樹木からの落ち葉が風に吹き寄せられてたまったところを集めます。軽くてふわふわしているので、たくさん集めたつもりでも実際はそれほどでもなかったりします。今日のような陽射しに当たって落葉かきをするのは冬の愉しみでもあります。
コンクリートにたまった落葉の層をかき集めると、新しい落葉の下には、すでに腐植になったもの、いわゆる腐葉土が層を作っています。去年の今頃もここで落ち葉かきをしているので、わずか数か月でこうした腐植ができたことになります。見ればダンゴムシやトビムシ、ゲジどの多、あまり好かれることのないこうした虫たちがせっせと毎日落ち葉を食べて腐植を作ってくれるのですね。これなどは非常に貴重な腐葉土として春先の苗土にも使えます。森が自力でずうっと持続しているのは、こうした虫やキノコたちの分解によるところが非常に大きいそうです。分解者がいればこそ、雄大な森が何百年も持続できるわけです。そうした大きな自然の力に寄り添って野菜を作るのがオーガニックの基本ですから、いつもこうして腐葉土を眺めては、小さな宇宙に見入ってしまいます。
すっかり落ち葉を集めてしまうと、虫たちが生き残る場所がなくなるので、少しだけ場所を残しておきます。すぐにまた次の新しい落葉が集まってくるまでの一時避難です。こうして集めた落葉の一部を使って1月から「踏み込み温床」を作ります。春咲くのブロッコリーなどは、1月から種をまいて育てるので、こうした落葉は醗酵熱の素材としても非常に大事なのです。踏み込み温床に使い終わった後の落葉は、だいぶボロボロに分解されているので、これを8月には秋野菜の苗土に使います。こうした大きな循環の流れに身をゆだねるのがとても楽しい。アドレナリンが出てくるような楽しさではなくてその逆、セロトニン系の、すうっと癒される楽しさです。こうした感覚を五感で味わってほしいというのが「さとやま農学校」を始めた理由でもあります。皆さんも一緒に畑で五感を開いてみませんか。すでに説明会も始まっていて、本参加を申し込まれる人のペースが速いです。時代の流れでしょうか。どうぞお早めに説明会にご参加ください。説明会の詳しい内容はこちらです
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