ハクサイはなぜ結球するか

昨日の「さとやま農学校」で収穫したハクサイ。

ぎしっと詰まってきました。
 
この状態を「結球」と言います。
内側から新しい若い葉が次々と発生してくるのに展開しない。
まるで「纏足(てんそく)」のように固まったまま。 
 

しかし。???
 

どうして、こんな風に丸くちぢこまるのでしょうか?
 

つまり「結球」とは何のため?
 

だって、不思議ですよね。
 

このたくさん重なっているものは全部、葉っぱです。
ということは、大きく広がって、太陽を浴びるのが役目でしょう。それを何故しない?
 

結球する野菜、つまり白菜やキャベツは、もともと自然界には存在しません。たまたま結球してしまった変異個体から、人間が選抜して育て上げたミュータントです。いわば出目金や錦鯉のように。
 

結球した野菜は、ひとつの個体に分厚い葉がぎっしり詰まっていて、食べがいがある。人間にとって都合がよい。
それだけのことです。 
 

キャベツの原種はケールの仲間。
ハクサイの原種は、今でいう「べかな」などの仲間と推定されています。
いずれも、ハクサイやキャベツみたいに部厚い葉はありません。
 

それが長い時間をかけての品種改良の結果、人間が「うまい」と感じるアミノ酸(うま味)を葉にたっぷり蓄えた野菜になりました。 
 

谷崎潤一郎の「美食倶楽部」は、さんざんに美食を重ねた都会人が究極の「美味」を謎の洋館で味わうという耽美・退廃を凝縮した作品です。
その究極の「謎のうまいもの」の正体がハクサイであったのは、いかにもうなづけます。
 

食の官能を、肉ではなくてハクサイに託して描いた谷崎潤一郎の五感には脱帽です。今どきの凡百なグルメ小説では決して真似できない表現。まだ読んでない方はこの冬にぜひ。 
 

もちろん、ハクサイやキャベツもたっぷりおあがりください。
人間の勝手でこの世に出された、ちょっと可哀そうな身の上ですが、でも美味しい。