春ダイコンの種取り・母本選抜

大根の種取り

春まで食べたい年越しダイコン(白首)の種取り用の母本選抜。
年内に食べきる青首と違って、私はこの時期にやります。

こちらの、準北国とも言える寒冷な気候風土にあわせた選抜をしたいためです。
選抜にあたっての大事な要素は、見た目の色や形や大きさのような「発現形質」よりも、生理的な形質です。

すなわち、2月までの寒さを元気に生き延びてきたことが大事です。
年内に母本の選抜をしても、これは分からないですから。
ここまでの段階で萎びてしまった個体はもちろんアウトです。
根の張り具合や肌のツヤ、時にかじったりして味も見ます。
しっかり吸い込み(下方への真直)があって、地表近くも寒さで割れていないこと。
こうした基準で選んだ母本を移植しますが、
さらにこのあと、3月上旬ころに早く花が咲いてしまう母本は間引いていきます。

「3月まで食べられるダイコン」をコンセプトにした選抜淘汰ですので、
直ぐに花が咲いてしまうようではよろしくない。


こうした選抜にあっては、異種の品種同士の交配もありです。

いわゆる交配種を作って、その中から数年かけて上にあげた形質を持ったものを選抜していく方式です。

交配種と聞くと固定腫の対極のように思われるかもしれませんが、それは誤解です。

日本はとりわけダイコンやカブなどのアブラナ科が世界的に見てもバラエティーが多いので、自然界での虫による交雑や人為での交配はずうっと昔からありました。だからこその多様性であり、そのうえで各地の風土・嗜好に会ったものが選抜・固定されてきたわけです。多様化→拡散、固定→収縮、というようなイメージでしょうか。

この拡散と収縮の繰り返しが大事なので、どちらかだけでは成り立たないものです。

ですから種取りというのは、昔の品種を大事に守ることもあれば、農家として残したい理想の品種を創っていく作業でもあるのです。