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固定種トマトの種取りに向けて

こんにちは。

神奈川・相模原で自然栽培をしながら農業体験などの農的暮らしの楽しさをお伝えしている「すどう農園」です。

西日本の豪雨は、今回も大変な模様ですね。
知り合いの農家さんたちにもコンタクトを取っていますが、今のところはご無事のようですが、大饗の被害というのは、だんだんとボディーブロウのように効いてきます。日照時間が少ないことや、地温の低下など、どのような影響が出てくるのか、それに付随する病害虫の被害などもあります。まずは大過のないことを祈るばかりです。

 

自生えトマト 自然栽培 農業体験 固定種
固定種のトマト。すどう農園でこぼれ種から育ったトマトの果実から昨年種取りしました。いわゆる「自生えトマト」ですね。雨でも皮が割れにくい中玉トマトです。

トマトの種とりが始まりました。
本当はもう少し時期が早いのですが、何しろ長雨で遅れたことと、実のついた時期に暴風でかなりやられたダメージも大きかったですね。あのときは傷んだ実を落とし、脇芽の選定は控えて樹勢の回復に努めて、なんとかここまでもってきました。
 
一発勝負の葉菜類や根菜類と違って、トマトやナスなどの果菜類は長距離走です。雨も風も、いろいろあります。手間がかかるぶん、それゆえの楽しさもありますね。
 
一枚目は、自生の中玉トマト。
こぼれたところから生えてきたトマトから種取りをしたものです。つまり種まきも育苗も何もしていません。やはり強い。
近頃では「自生えトマト」という種も売っていますが、あくまでも「自分の場所で生えてきたかどうか」が大事なのであって、よその場所で「自生え」しても、それはちょっと意味が違うものと思います。
 固定種を大事に思うのなら、とにかくまずは一種類、ご自身の場所で種を採ってみましょう。あれもこれも欲張らないほうがいいです。犬や猫を飼うのと同じ。

固定種 トマト 世界一 自然栽培 農業体験
固定種トマト「世界一」は、露地栽培すると割れやすい。ここだけ削って食べれば昔ながらのトマト臭い味です。多少の割れなど気にせずに、じっくり完熟させて食べるのは自家菜園ならではの贅沢ですね。

大玉トマトは定番の「世界一」
昔ながらのトマトというのは、僕が子供の頃の味を思い出します。それこそ50年前の話ですが、当時はトマトの嫌いな子供が珍しくなかった。いまみたいに甘くなくて、むしろ青臭い。育て方にもよるのでしょうが、そういうものだった。
なんというか、野菜的な野菜だったわけです。
 
今のトマトはタキイ種苗の「桃太郎」以来、甘味が強くなっていますね。
まあこの「桃太郎」シリーズもロングセラーで改良が続いていますが、いずれにしても、ちょっとしつこい感じがします。
トマトやトウモロコシなど、甘さをことさらに競い合う風潮もいいかがなものでしょうか。
ちなみに、糖度というのはショ糖や果糖などの糖類だけの濃度ではありません。アミノ酸などもカウントされますから「味の濃さの目安」くらいに思ってください。

 
で、この「世界一」は固定種なので種取りには向いているのですが割れやすい。
3枚目の写真のように、上からザクっと割れて来ます。完熟にして食べるなら、だからご自宅で育てて、ギリギリ割れてきたな、というところで収穫してすぐ食べるのがいいですね。
農家が作って出荷するタイプではないのです。

露地栽培のトマトは、雨の後は特にチェックが必要です。
割れがないか、虫が出ていないか、カビなど出てないか。
タバコ蛾の幼虫などが穴をあけていたらその場で実を切って、犯人がいたら現行犯でつぶします。そうでないとすぐ近くの実に移ってしまいますから。
 

トマトは、とにかく手間暇のかかる野菜です。
システマティックなハウス栽培などでなければ、特に露地栽培などでは経営的には赤字です。
「すどう農園」も、加工部門があってソースをつくるのでトマトを多めに作っていますが、そうでなければ(つまり青果として)出荷していたらロスが多すぎて元手が取れません。
そんなことも、自家菜園でトマトを作ってみると色々と見えてくることでしょう。

明日の「さとやま農学校」では収穫したトマトから種を採るところまでをレクチャーします。
そうしてこれをまた来年まく、命の巡る様子を体感していただけるのが種取りの醍醐味です。