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自然農の小松菜と自生えトマト

自然農法の野菜作り教室@さとやま農学校・すどう農園
自然農法のコマツナ@さとやま農学校・すどう農園

秋の気配に、自然農の畑では、野菜たちが今年も静かに息づいています。

こんにちは。

神奈川・相模原で自然農を営む「すどう農園」です。

9月の声を聞くと、コマツナが草の間から芽を出してきます。今年の6月に一面のナバナを咲かせてミツバチの蜜源になり、私達の貴重な食べ物になり、あるいは虫に食われて虫はまた朽ちて土に帰り・・・そんな循環のなかで大地にこぼれた種が猛暑と豪雨を自らの枯れ草の下で身を守り、いま静かに芽生えています。

人間のしたことといえば、覆いかぶさるような草を折々に刈っては敷く。ただそれだけです。種まきすらしません。
自然農をやっていて毎年、この風景に五感すべてが和みます。
秋の虫の声が響いて、空にはアカトンボが舞って、秋雨でしっとり朽ちかけた草の隙間から芽生えるコマツナたちには、なんの気負いも感じられません。「自然」すなわち「自ずから然り」・・・あるべくしてある。なるべくしてなる。
なにかこう、フッと気の抜けるひととき。
毎日こうした光景に埋もれている農家ですら気が和むのですから、都会でいま以上に不自然な自粛に固められている人たちにとっては、こうした自然のめぐりの中に心身を浸すことが、何より大事なのではないでしょうか。

まもなく「さとやま農学校・秋のショートコース」が始まります。
4回だけの短い講座ですので説明は最小限にとどめて、生命の循環に浸って欲しいと思っています。

自然農法の野菜作り教室@さとやま農学校・すどう農園
自然農の自生えトマト@さとやま農学校・すどう農園

こちらはトマトの自生えです。
昨年も同じ場所で育っていたイタリアントマト「サン・マルツァーノ」の種がこぼれて育っています。いわゆる「自生えトマト」です。いまは「自生え」のトマトやピーマンなどの種子も販売されていますし、それはそれでいいのですが、やはり基本的には「よその畑で自生えした野菜」を買うことから一歩進んで、自分の畑で芽を出した野菜、というところまで進めたいですね。
これを何年も繰り返せば、地域の風土に適応した品種に固定されてきます。外から来たサン・マルツァーノが、だんだんと相模湖のサン・マルツァーノになっていくわけです。あまり個体数を減らさずに遺伝子プールの規模を保っておきながらこの自生えを繰り返していきます。コマツナであれば、比較的小さい面積で個体数が確保できるのですが、トマトのように個体が大きい場合には、あまりたくさん育てるのが物理的に難しいことがあります。しかし、もとの個体数が極端に少ないと、いずれ集団そのものが弱ってしまいます。これを「近交弱勢」といいます。人間世界でも外部を隔絶された集団でばかり婚姻を繰り返すとまずいことになりがちですが、それに近い事が起きてきます。それでも種を採る意味は大きいので「個体数が少ないからダメだ」などと思わないでください。

自然農法の野菜作り教室@さとやま農学校・すどう農園
自然農法の野菜作り教室@さとやま農学校・すどう農園

まだ残暑の戻りはあるでしょうが、それでも気配は9月です。
この先は残暑もさることながら例年の台風を心配する季節です。
世界各地での豪雨や山火事などのニュースには心の痛む思いですが、農に関して言えば、こうした気候変動には力づくでは限度があります。こんなコマツナやトマトのように、無理なく静かに機を図って生きる・生き続けるというのが原点と思います。