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サツマイモの品種の選び方

ジャガイモの無農薬栽培を学べる「さとやま農学校」は初心者の野菜作り教室です
ジャガイモの無農薬栽培を学べる「さとやま農学校」は初心者の野菜作り教室です

こんにちは。

 

神奈川・相模原(相模湖)で自然栽培の野菜やハーブを育てながら農的暮らしの講座を開催している「すどう農園」です。
 

雨が長いのでジャガイモをすべて掘り上げました。写真はノーザンルビーとシャドウクイーン。まだ枯れあがっていない株もあるのでもう少し待っておきたいところです。そうすればイモも大きくなり、皮もしっかりして保存がきくようになるのですが、これ以上の高温多湿で腐るリスクも考えて堀りあげました。ジャガイモは故郷が中南米の涼しくて乾燥した山岳地帯なので今のような高温多湿は元来好きでないのです。
 

ちなみに新ジャガイモとは、まだ地上部が枯れあがっていない状態で掘り上げたジャガイモのことです。ジャガイモは、夏に地上部が枯れることで休眠に入ります(休眠は寒いときだけでなく暑くても眠るものもあります。テントウムシなども真夏は姿をひそめますね)。休眠状態に入ったジャガイモは、自分を保護するために皮を厚くします。ところが地上部が枯れないうちはイモが大きくなる余地があるので皮が薄いままですから食べる時も皮ごと食べられます。これが新ジャガです。逆に大規模なじゃがいも産地では一斉に保存状態に持ち込むために除草剤で地上部をからしてしまうこともあるようです。

 

地上部が枯れあがったジャガイモは、真夏でも排水性が良い畑ならば堀り上げずに枯れ草などかぶせて、お盆くらいまで畑においておけます。お盆を過ぎると涼しいときもあるので、品種によっては休眠が早く醒めて発芽するので掘り上げます。ただし、畑に埋めたままだとどこがジャガイモだったか分からなくなるし、腐敗や獣害などにあうリスクも考えれば早く掘り出して食べてしまった方がいいでしょう。

 

ジャガイモも年々品種が増えてきています。国内で開発されたジャガイモばかりでなくフランスなどから輸入されたジャガイモの品種も増えました。こんなにジャガイモの品種があると迷うところですが、ジャガイモの品種の選び方は「粘性か粉質か」「早生か晩生か」を大きな軸で選ぶといいでしょう。ジャガイモは「ホックり系統」「ねっとり系統」という言い方もしますね。カボチャも同様ですが、つまりホックりが粉質系、ねっとりが粘質系です。でんぷんの種類が違うところから食感の違いにつながってきます。


たとえばお米などの穀物だと「うるち」「もち」の両系統に分かれますが、これもでんぷん質の違いによるものです。アミロース(分子が直鎖状で消化されやすい)が多いものがさっぱりした「うるち系品種」で、かたやアミロペクチン(分子が枝状で消化されにくい・腹持ちが良い)が多い品種が「もち系品種」です。ただし両者はきっちりと線引き区分できるものでなくて、たいていの品種には両方のでんぷんが含まれるので「もち品種」と「うるち品種」の間にはグラデーションがあります。例えばコシヒカリは一般にうるち米として売られていますが、アミロペクチンが多いのでもち米に近い食感です。それが国産米での圧倒的な人気の秘訣でもあるでしょう。「ささにしき」系統はさっぱりしているので外食産業で多く使われます。さらにインドなどのお米はアミロースがほとんどなのでもっとあっさり・ぱさぱさしている「うるち系」の筆頭です。
 

話がお米に飛んでしまいましたが、このように食感で選ぶことがジャガイモでも大事です。これは種イモの業者さんに聞けば教えてくれます。それから早晩性です。土地によって春が遅い、早いの違いがありますから、その地域に適した収穫ができるようなスケジュールをつくり、それに合わせて品種を選ぶことです。
 

あとは収量の多少や色合い、風味なども品種によって違いがありますから、上にあげた基本形の品種プラス「今年のお楽しみ」みたいな品種を合わせて作るのが愉しいですね。お楽しみの品種選びは自給菜園ならではの愉しみです。
 

8月のお盆を過ぎると秋ジャガイモの植え付けも始まります。これは春に使った品種とは別のジャガイモです。例外としてアンデスのように春にも夏にも栽培できるジャガイモ品種がありますが、秋に育てられる品種の多くは九州で開発された品種が多いです。なぜならばジャガイモは上に書いたように暑いと眠る生理形質がありますが、これも品種によって違いがあります。九州のように夏がいつまでも続くところでは眠りが浅い傾向があります。そうでないといつまでも「暑い暑い」と寝たままで冬になってしまいますから、多少は暑くてもさっさと目を覚ましてほしいわけです。

そうして開発された「デジマ」などの品種が夏まきのジャガイモとして主要です。逆に春まきのジャガイモである「キタアカリ」や「メイクイーン」などの北方系の品種は向きません。なかなか気温が高いと発芽せず、やっと芽を出したかと思うともう冬ということになりかねません。ちなみに「メイクイーン」の語源は、収穫したら翌年の五月まで保存が効き、しかもその頃がでんぷんが熟成して旨いということだそうです。さすがに一般家庭では一年近くもジャガイモを保存して置ける場所はないですね。
 

9月から始まる「さとやま農学校2020ショートコース」の受付も始まっています。既に数名のお申し込みをいただいておりますが、小人数の開催ですので、締め切りが早まると思います。また8月からは講座に先駆けて種まきや品種選びなど、いまの気候変動に対応した内容を動画で配信します。お申し込みはお早めにどうぞ。