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コウゾの実る季節

こんにちは。

 

神奈川・相模原(相模湖)で自然栽培の野菜やハーブを育てながら農的暮らしの講座を開催している「すどう農園」です。

 

里山にコウゾ(楮)の実る季節になりました。
今年は例年になく実つきが多いようです。畑だったら豊作と表現することろですが、コウゾは鳥が実を食べて、その糞から種が発芽して増えるようで崖のあちこちに自生しています。普段は目立たないコウゾですが、この季節になると崖や藪の随所がキラキラ光ってくるのでそれと分かります。クワ科ですからブルーベリーや桑の実と同じように美味しく食べられます。ねっとりとした舌触りでとても甘い。まあジャムにするほどの量はありませんから、その場でつまんでいただく程度の愉しみです。でも本当にきれいで、梅雨に入ってだんだん花も少なくなる里山には貴重な赤です。
 

コウゾは、和紙の原料でもあります。むかし学校で教わったときはコウゾなど見たこともなかったものでしたが、成程この茎から繊維を取るのだと知り、十年以上前にコウゾの紙すきで地域おこしができないかと考えたこともありました。実際に和紙をつくっている市川大門町を訪問して伺ってみると、今ではコウゾはタイから輸入しているとのことでした。日本では、コウゾを素材にするまでのコストが高くなって割にあわないのだそうです。コウゾばかりでなく工芸作物のほとんどはコストというフィルターにかけられて、ものづくりの現場から姿を消しています。単に素材として考えるとコストの違いは無視できるものではありませんから仕方がないですね。しかし、こうした里山の恵みからいろいろなものが出来上がるプロセスを都会の人たちに体感していただく、あるいは一緒に道筋を歩いていけるようなことは、これからもっともっとできていいはずだと、コロナの数か月を経て改めて思います。都会で逼塞して暮らしている皆さんも、是非こうした里山に来て深呼吸をしてほしいと思います。あと三日で夏至・新月。その先は暑くはなるけれど、ヒグラシも鳴き始めて日の入りは早まっていきます。今のうちに深呼吸を。