真冬のイチゴに想うこと

こんにちは。

神奈川・相模原の里山で自然農を営む「すどう農園」です。

9月と10月の長雨を忘れるほど好天が続いています。
自給のための野菜づくり教室・さとやま農学校」も農園を整えていく季節になりました。
「だんだんと説明会のときみたいな風景に戻ってきますね」と、感慨深い表情でつぶやく受講生さんもおいでです。
この一年は、どなたにとっても、忘れられない重みのある一年だったことでしょう。

畑にいることで、改めて世相を感じることもできます。たとえば諸物価の値上がりも、食や農の現場では実にリアルに影響があります。いま、多くの農家にとっての大問題は化学肥料を筆頭とする資材の値上げでしょう。化学肥料の値段は、この2年間で概ね3倍。家畜の輸入飼料も今年になって倍付けだそうです。政府は価格補填などの方針を打ち出していますが、あくまでも一時的なものです。それはそうでしょう、国家予算は有限ですから。
 資源・資材の値上がりは一時的なものではないと思います。伝染病や戦争は、引き金に過ぎません。いままでの日本の食や農が、どれほど脆い前提に成り立ってきたかを考えれば、起こるべくして起こった状況です。であればこそ、いまさら政府に価格補填をどうこうしろというレベルの話ではなく、もっと根っこのところから考え直す。いや、考え直すなどというのんびりした時間も今の農業の現場に残されているかどうか。 
 間もなくクリスマスを迎える11月は、イチゴ農家さんに取ってはかき入れ時の始まりです。ショートケーキに乗せるイチゴの出荷、そして新春の店頭に並ぶイチゴへと続いていくからです。そのハウス栽培のイチゴが今の原油高で大変なダメージを受けているというニュースは皆さんもお聞き及びかと思います。
 直截に言います。
 真冬にイチゴを食べる時代は終わりです。

 イチゴに限らず、生鮮食品は無理なく栽培できる旬に食べればいい。石油のチカラで半年も前倒しして食べる必要はないと思うからです。旬の出荷となれば、古典的な市場原理(見えざる手)が働いて価格が暴落するリスクもあります。となればこれからは、古典的な市場でなくて、新しい交換の形をつくっていくのが筋道でしょう。それは古い水夫には大変なことですから、ここはいちばん、若い水夫に航路を拓いて欲しい。とはいえこの国は若い水夫も少ない。これも積年の弊害が出てきたことです。せめて移民や難民をもっと受け入れて、日本という社会の土作りを多様に備えておけばよかったものを・・・古びてコチコチに苔むした土には、新しい芽も出にくいものです。