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地母神と交わる

こんにちは。

 

神奈川・相模原の里山(相模湖)で自然農を営む「すどう農園」です。

真夏の草の勢いも落ち着いてきました。前回のブログ「自然農の草刈り」にも書いたように、だいたい一箇所を3回ほどインターバルを置いて刈っていくことで、植物の再生力も尽きてきます。夏の太陽エネルギーも盛りを過ぎて、全体的に雰囲気が落ちついてきます。このタイミングが草刈りのベスト。それを過ぎると草は種を飛ばし始めるし、その後は枯れて固くなり、あるいは台風で倒れ合って、非常に秩序のない乱れたヤブになって荒れます。

さて今日は、秋の果樹の植え付けに向けて、植える場所の位置決めです。
穴は既にいくつか掘ってあります。7月の「さとやま草木譜」でも掘りました。その様子はブログで紹介しています。
野菜と違って、いったん植えたものは基本的に動かせないから場所ぎめは大事です。植え方は農家によって、あるいは樹種によって千差万別ですが、すどう農園の場合は、栽培理論よりも人間の感覚を大事にしたいと思います。
果樹の専門書にあるような「株間は何メートル云々」といった基本形は頭に入れつつも、「ここに樹があればいいんじゃないか」「ここなら樹も心地よいのではないか」と五感で感じながら場所を決めていきます。場所を感じることは人間にとって非常に大事なことです。だからこのことは別の機会に改めて書きたいと思っています。1970年代からのサブカルチャーをご存じの方ならカルロス・カスタネダの一連の著作、ドン・ファンの「呪術師の教え」シリーズを読んだ方もおいででしょう。メキシコの先住民の呪術師ドン・ファンの教えに「トナールとナワール」というのがあって・・・あ、これは長くなるからやっぱり別の機会に!

そのような感性の作業にうってつけの人に、今日はお手伝いを願いました。プロダンサーの青柳ひづるさんです。青柳さんは、東京・両国での公演を数日前に終えたばかりで、私も舞台を観に行きました。幼少時からクラシックバレエやコンテンポラリーダンスを経てきた動きの美しさに浸ることができました。今日は、身体の感覚を究めた人と果樹の位置決めです。あらかじめ基本的な距離を直線的に配置して杭を目印に打ってあります。そこからだんだん揺らぐように、感じるまま自由に位置をずらしてくださいとお願いしました。あとは信頼してお任せです。でもさすが、それこそ舞台のダンサーの位置を決めるように、ゆっくりと歩き回りながら、ときに祈るような気配も漂わせて、位置を決めてくださいました。風の通り抜け方や、太陽の動きも考えながら、ゆっくり並べ直した杭が並ぶ雰囲気は、なにか美術館のモニュメント群のようです。動かないはずの杭が生き生きとしています。やっぱりお願いしてよかった。

そうして最後はやはり、雨の中で火を焚いて地母神にご挨拶。
今日は穴を掘るだけでしたが、こうした穴が段々と熟成して、秋の苗木を暖かく受け入れて、育んでくださいますよう。
さあ、明日以降は秋のハクサイその他、種まきが目白押しです。