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里山のインスタレーションは五感を使う

こんにちは。

神奈川・相模原の里山(相模湖)で自然農を営む「すどう農園」です。


前回のブログから一週間が空いてしまいました.。やはり猛暑で、あれもこれも滞りがちです。
少し日付を戻って7月10日(日)に「さとやま草木譜ワークショップ」ワークショップがありました。
暑さを避けて夕方4時からの開催です。西日の当たらない畑は、初夏の間はヨモギをたっぷり摘んだ場所でした。今回は静かに水と向かい合うワークショップです。上の写真は、Aフレームという非常にシンプルな等高線を取るための道具です。なんのことはない、英語の大文字のAそっくりの二等辺三角形のフレームをつくって、頂点から重りを垂らしただけのものです。まず基準になる一点に片方の脚を置き、もう片方を移動させながら場所を探ると、どこかで重りがフレームの底辺を二等分します。その時の両脚の位置が等しい標高になるわけです。中学生でもわかる図形の応用。これを初めて見たのは30年前のフィリピンの山中で無農薬栽培のバナナの苗を植え付ける作業を見たときでした。「コンターファーミング(contour farming)」と呼ばれるものでしたが、この道具を担いで山の中をひたすら一歩づつ等高線を確定し、その等高線に沿ってバナナを植えたり、その他の植栽をしていったのでした。いまでいうアグロフォレストリーの一環ですね。おそらく今ではレーザーで簡単にレベルを取るのでしょうが、このAフレームは費用は安いし、小さな畑であればむしろ便利です。里山で段々畑をつくるときの適正技術ですね。
 こうして大まかに等高線を確定したあとは、畝を立てて水を引いていきます。実に広い場所なので、まずはグランドデザインをするのが一般的なのでしょうが、そうではなくて、少しづつ場所の気配を身体で感じて確かめながら場を更に創り上げていくのが目的です。水を引く感覚、水辺に苗を植える感覚、そうしたひとつひとつを味わいながら拡張していきます。
 そもそも場所のデザインは、よほどこうした作業に通じた人間でないと、非常に現実味のない造景になります。そういう例をたくさん見ているし、都会人の頭の中でのデザインに溺れて現実の造作がついていかない、そんなワークショップも多い。ですから急ぐことはないのです。ステップを踏みながら、納得したら次にいく。素材は現場のものを、キョロキョロと見回しながら塗り重ねるように足していく。その場に何があるかは、見えているようで見えていないものです。だから複数の人がいるといいですね。そしてまた時間をおいてから現場に赴いて、「どうも違和感があるな」と感じたら変更する。その繰り返しです。逆に言えばコンクリートで固めてしまうような変更の聞かないデザインは危険です。今どきの農村の用水路などは最たるものですね。以下、フォトギャラリー形式です。